(株)東海理化:野鳥がさえずる屋上庭園

名古屋市中心部から車でおよそ30分。小牧ICをおりると、物流倉庫や工場が立ち並び、トラックが行き交う“ものづくりの町”らしい景色が広がります。そんな風景の中に、野鳥が羽を休める屋上庭園があると聞き、東海理化の工場を訪ねました。

屋上庭園ができるまで

2024年9月にオープンした東海理化の屋上庭園は、30人ほどの社員が千萱(ちがや)や芝生を自分たちの手で植え、完成させたものだと言います。「この辺りはもともと水田や畑が広がる地域だったんですが、工場地帯になったことで田畑が減ってきてしまいました。そこで、この屋上庭園は尾張平野の生態系を考えてデザインをしたんです」そう話してくれたのは、(株)東海理化のCN/CE戦略推進室・溝口さん。以前は、省エネ・再エネ担当だったという中村さんは「前は、屋上を見ると ”太陽光パネル置けないかな” と、考えていたんです。それが今では "ビオトープ作れないかな" と思うようになってしまいました」と笑います。

庭園は2階の屋上にあるにも関わらず、水場にはカエルがやってきたそう。
水場の近くにはガマが生えだしました。水辺の生態系が生まれています。
「屋上全体をビオトープと考えています」と説明する中村さん

茅、ライ麦

屋上庭園に主に植えられているのは茅(チガヤ)。60cm以上に成長する茅は昆虫が隠れることができる場所を作れるため、「屋上の中でも高低差を作ろう」と考えて植えられましたが、思わぬ地域の需要がありました。

毎年6月末になると全国の神社で行われる茅(ち)の輪くぐり。この茅の輪は茅(チガヤ)で作られています。もともとこの地域にたくさんあった茅ですが、今はもうその数もすっかり少なくなってしまいました。地元の神社が茅不足で困っているという声は溝口さんの耳にも入り、この屋上茅を地元の神社で活用してもらうことに。千萱は蒸れを防ぐために6月に刈り込まなければいけないため、これは庭園にとっても嬉しい活用でした。今後は地元20社の神社の茅の輪をまかなえるように広げていきたいと展望を持っています。

茅の間を糸トンボが飛び交う姿も。

屋上ではライ麦も育てています。麦茶にしたり、茎で北欧の飾りヒンメリを作ったりと、イベントも開催したそう。収穫物が人と人をつなぐ役割を果たしています。

大きく育ったライ麦

生物多様性

庭園を見学していると空から「キリッ」という声が聞こえてきました。噂に聞いていた野鳥です。この声は庭園にもよく遊びに来るケリ。ケリは愛知県が豊かな自然環境の指標として指定している目標種のひとつで、主に水田などの開けた環境を好む鳥です。屋上庭園では、野鳥が羽を休められるようにと、止まり木も作ってありました。

野鳥の休息スポットになっている止まり木

ふと足元を見れば、ちょうちょが気持ちよさそうに飛んできます。止まったのは雑草の花・・あれ?雑草?これは植えたわけではないですよね?不思議に思って聞いてみると、こういった屋上でも鳥や虫や風に運ばれて雑草の種が飛んできて、雑草はどんどん増えているのだそう。種ってすごいですね!日本の在来種でもあるシロバナタンポポや、すみれ、あざみといった様々な花が春の畑にかわいらしく咲いていました。

羽を休めるモンシロチョウ

生き物は他にも、ヒヨドリやムクドリ、ツチイナゴに、エンマコオロギ・・トンボだけでも5〜6種類がやってくるそう。これは、もしこの場所がただのコンクリートの屋上であったなら、来ることのなかったものたち。ここは確実に、生き物たちの居場所を増やしています。

最後に見せてもらったのはバイオネスト。中には刈った草や藁が入れられ、堆肥化できたら庭園内の畑エリアで使っていくそうです。

自動灌水システム

さて、この素敵な屋上庭園。ここまで見てきて、夏の水やりがやはり気になりますよね。実はここでは自動の灌水システムが畑の下につくられています。

地下水をポンプで組み上げている。
組み上げられた水はホースを通って、畑の下へ流れていく。
サイドの壁には排水できる開口部が作られている

地下水を使っているため水道代はかからず、ポンプで屋上まであげる電気代のみで運用されているそう。これは暑い夏も安心ですね。

想像していた以上に生物多様性が豊かに育まれ、地域の方達と手を取り合って運営されていた屋上庭園。茅の収穫時には「誰が一番長い茅を収穫できるか選手権」(一番長い子で1.3mだったそう!)を開催したりと人と自然をつなぐ場にもなっていました。

こうした取り組みが広がっていけば、都市の中にも人と生き物、そして自然が共に息づく場所が増えていくのだろうなと感じました。

ご案内いただいた中村さん(一番左)、溝口さん(左から二人目)

また、今度は茅が大きく育った冬の刈り込みの時期に違う景色を見に行きたいです!ご案内いただいた東海理化・溝口さん、中村さんありがとうございました。

今回取材した会社

(株)東海理化

1948年創業。自動車用スイッチやシートベルト、キーロック、ステアリングホイールなど、自動車部品の開発・設計・製造・販売を手掛ける自動車部品メーカー。「快適・安心・安全」をキーワードに、人とクルマをつなぐさまざまな製品を提供している。


所在地:〒480-0195 愛知県丹羽郡大口町豊田三丁目260番地

公式ホームページ