パーマカルチャーデザインラボ

フォレストガーデンに行く

【お話しを聞いた人】

川村 若菜 さん

大村 淳 さん

からだのスイッチを、切り替える

フォレストガーデンとは、すべての生き物たちにとっての「食べられる森」。

10年かけてゼロからつくったそのガーデンに、どんな秘密が隠されているのかを知りたくて私たちは名古屋から朝の満員電車にとび乗りました。

東海道線に揺られて降り立ったJR高塚駅からタクシーに乗り、運転手さんと一緒に迷いながら着いたその場所は、一面にのどかな農地が広がる一角でした。

指定された静岡県浜松市のその場所は、畑というよりもまさに「ガーデン」。

パーマカルチャーデザインラボの川村若菜さんと大村淳さんが、このフォレストガーデンを運営しています。

ガーデンのあちこちには、若菜さんが描いた植物モチーフのイラストが散りばめられていて、とにかくいい雰囲気です。

若菜さん:

「初めましての方もいるので、お互いのことを知ることから始めましょう。ガーデンツアーから持ち帰りたい事も教えてください」

ガーデンツアー参加者は知り合いではあるものの、「園庭の植栽の参考にしたい」「人が来たくなる場所を学びたい」「森の解像度を上げたい」など個人的な関心が聞けて思わぬいい時間でした。

若菜さん:

「このガーデンはパーマカルチャーの考えを取り入れてつくっています。3つの原理をベースに、『どうしようかな?』と思ったときには、ここに立ち戻って判断するようにしています。」

【パーマカルチャー3つの原理】

①自然と生き物を大切にする (EARTH CARE)

②人(自分、他人、過去、未来の存在)を大切にする (PEOPLE CARE)

③豊かさを分かち合う (FAIR SHARE)

「このガーデンでとても大切にしているのは、自然をよく観察し、自然と調和することなんです」そんな若菜さんの言葉を胸に、森の入り口に来ました。

若菜さん:

「いちど目をつむってください。どんな音が聞こえますか?」

問いかけを自分に向かって、心の中でそっとリピートしてみます。

ーーどんな音が聞こえますか?

近くで淳さん枝を切る音がパチンパチン。

どうしよう。最初はそれしか聞こえない気がしました。

けれどゆっくりと時間が経つにつれて耳が慣れてきました。

遠くの鳥のなき声が聞こえ、風が葉をゆらした音が聞こえ、そのうちに「風そのものの音」まで聞こえてこないかと耳に全神経を集中させてみます。

暗闇に目が慣れるように、私の身体がいつも聴き流していた音たちを拾いだし始めたことに驚きました。

若菜さん:

「太陽はどこにありますか?目をつむったまま太陽の方を向いてください。」

全員がゆっくりと向きを変え、それから、そっと目を開けてみます。

みんながぴったりと同じ方向を向いていました。

森の案内人に教わる、9つのレイヤー

 

畑の横の小道を進むとすぐに、「木のトンネル」が現れました。

このトンネルを抜けると、もうそこはすっかり森の中でした。ふわっと湿度がやさしく上がり、さっきまでとは全く違うひんやりとした空気が肌を包みます。しっとりとした土のにおい、木漏れ日がつくるまばらな光、深みも明るさも違う緑のグラデーション。

森の入り口で音を聴き、太陽を感じたことで、私の全身が森からの情報をキャッチできるようになっていることに気がつきました。

いつもなんとなく見ているどんぐり。名前も知らなかったその木が、とてつもなく背の高い「スダジイ(高木)」と教えてもらいゴツゴツとした幹をなでてみる。

斜面に茂る「ウラジロ(草木)」のくるくると巻いたかわいい芽と、ピンと開いた葉の違いに心をくすぐられる。

地面に落ちている葉をそっとめくってみると、葉の裏には美しく広がる真っ白な菌糸を見つけて、その繊細さに目を凝らしてみる。

若菜さんはまるで案内人のように、森の構成メンバーをひとりひとり紹介してくれました。

「森」という大きなかたまりだった景色が、それぞれの名前や役割を知ることで、植物たちがそこにいたことに初めて気がついたような不思議な気持ちになりました。

ここからは、若菜さんが教えてくれた、森を形づくる「9つのレイヤー(階層)」をご紹介します。

① キャノピー(高木)
とても大な木

② サブキャノピー(亜高木・中高木)
高い木

③ シュラブ(灌木)
人の背より大きい細い幹の木

④ ハーベイシャス(草木)
野草、野菜、雑草

⑤ グラウンドカバー(地覆)
地面に広がる草

⑥ アンダーグランド(根圏)
根っこ

⑦ クライマー(蔓)
蔓性の植物

⑧ アクアティック(水生)
水辺の植物

⑨ マッシュルーム(茸)
菌類

森の中で重なり合う9つのレイヤーが森の豊かさの理由のひとつで、彼らにはそれぞれに大切な役目があることを体験しながら気づいていき、勉強とは違う納得感がありました。

「ただの緑の塊」に見えていた森が、それぞれの役割を知った瞬間に、生き生きとした『命の集まり』として目の前に立ち現れてくる。それは、自分の視界がガラリと開けるような、とても新鮮で不思議な体験でした。

「食べられる森」と、これからの街

森の中をじっくりと見てまわり、私たちの身体がしっかりと自然からの情報を受け取れるようになった頃。私たちは静かな森を抜けて明るいフォレストガーデンへと戻ってきました。

ここからは、いよいよフォレストガーデンのお話しです。

このガーデンは、先ほど森のなかで学んだ「9つのレイヤー(階層)」の仕組みをそのまま取り入れたデザインになっています。それぞれの植物が役割を持ち、ある程度成長すると人が手をかけすぎなくても自然の力で豊かに自立してくれるのだそうです。

例えば、日陰をつくるために「アカメガシワ」をキャノピー(高木)として配置する。その下(サブキャノピー・中高木)には、実がなる「金柑」を。足元(ハーベイシャス・草木)には「ヤブカンゾウ」を植え、地面を覆うグラウンドカバー(地覆)には「イチゴ」を育てる。そんな立体的なひと区画があったり、別の場所には、収穫がしやすいようにベリー類を集めて植えたエリアがあったり。

人が利用する植物を「森の構造」に合わせてデザインすることで、植物たちは立体的に、のびのびと育ちます。すると、そこへ自然と虫たちが集まり、さらにその虫や木の実を求めて鳥たちもやってくる。

生き物の循環がぐるりとまわるその場所は、まさにすべての生き物たちにとっての「食べられる森」でした。

この考え方が何より素敵なのは、「広大な敷地がなくても始められる」ということです。たとえ小さなプランターであっても、異なる高さの植物を立体的に組み合わせれば、もうそこは立派なフォレストガーデン。

自然の役割を理解して上手に力を借りる。こんな柔軟さがこれからの街づくりにはしっくりくるのではないかな。と我が家にも取り入れてみたくなりました。

実際、このフォレストガーデンは徐々に街にも広がり始めているようです。例えば、公民館の植栽が食べられる森になり子どもたちとの活動があるようです。単一種の緑化ではないこのガーデンにすることで、生物多様性を守り育てる「ネイチャーポジティブ」の貢献にもつながります。

私たちが「グリーンジャーニー」として取り組んでいる環境活動とも地続きにある、とても親和性の高いお話し。各地で素敵な取り組みの輪が広がっていることを知れたのは、とても励みになりました!

見学の後、若菜さんと淳さんに伺ったお話しは、Spotifyで聴くことができます。

フォレストガーデンの今、観察から見えてくることなどお話しいただきました。心地よい外の空気感を音声からもお楽しみくださいね。

今回取材した会社

パーマカルチャーデザインラボ

『いのちが生かされ合う森のような菜園』を日本中に広げるパーマカルチャー・チーム。浜松を拠点に全国の森の作り手たちをサポートする活動をする。